税務会計に関連した気になるニュースをご紹介しています。
・第1回 税制改正大綱 法人課税編(H28年度) ・第2回 税制改正大綱 消費課税編(H28年度)
・第3回 28年の寿命だった法人利子割 ・第4回 税制改正大綱 個人課税編(H28年度)
・第5回 2016年度税制改正:雇用促進税... ・第6回 どっちが優先?遺言と遺産分割協議書
・第7回 金融機関の「暦年贈与サポート... ・第8回 賃貸用建物の譲渡と課税事業者
・第9回 相続税額の2割加算と養子 ・第10回 タワマン節税、ついに規制
・第11回 所得拡大税制、中小企業優遇を... ・第12回 平成29年度税制改正 個人所得課税編
・第13回 平成29年度税制改正 資産課税編... ・第14回 平成29年度税制改正 法人課税編
・第15回 私道の相続評価で最高裁が審理... ・第16回 最高裁:節税のための養子縁組で...
・第17回 法定相続情報証明制度が運用開始へ ・第18回 法人成り メリットとデメリット...
・第19回 平成29年4月1日より設立・異動... ・第20回 H30年1月1日以後の手続き 保険...
・やさしい税務会計ニュース 第21回〜はこちら
現行法では、生命保険契約の契約者の名義を変更しただけでは、新たに契約者になった者に対する贈与の課税はありません。
具体的には、「甲」契約者でかつ保険料負担者、「乙」被保険者、「丙」保険金受取人の場合で、その後、甲から丙に契約者の名義を変更し、丙が保険料を負担することになったとしても、名義変更時までに、甲が負担していた保険料相当額については、丙への贈与にはならないということです。
●名義変更後の課税の取扱いと問題点
上記例において、@丙への名義変更後、甲死亡前に保険の満期を迎えると、当該満期保険金は丙が受け取ります。
この場合の丙の課税は、丙自身が負担した保険料相当額に対応する保険金部分は一時所得としての課税を受け、甲が負担した保険料相当額に対応する保険金は甲から贈与により取得したものとして贈与税の課税を受けます。
また、A名義変更後、甲の死亡前に被保険者乙が死亡すると、当該死亡保険金は丙が受取ります。この場合の丙の課税は、死亡保険金の内、丙が負担した保険料相当額に対応する保険金は一時所得としての課税を受け、甲が負担した保険料相当額に対応する保険金は甲から贈与により取得したものとして、贈与税の課税を受けます。
なお、B名義変更(甲から丙)が甲の死亡によってなされた場合には、丙は生命保険契約に関する権利を相続等により取得したことになり、甲の本来の相続財産として相続税の課税対象になります。
以上が保険契約の名義変更に関する課税の取扱いです。しかし、実際の申告では、名義変更に関する資料が十分に整備されていないこともあってか、受取保険金のすべてが一時所得として申告されていた等、法が予定していた申告が行われていない事例が散見されたようです。
●平成30年1月1日以後の取扱い
現行法では、保険会社から税務署に提出される情報(支払調書)には、名義変更に関する情報、元の契約者の払込保険料に関する情報はありません。
そこで、平成27年度の税制改正で平成30年1月1日以後、保険金等の支払があった場合、または契約者が死亡し名義変更があった場合には、保険会社は上記情報を税務署に提出することを義務付けられました。
今一度、保険関係の書類を確認し、今後の対応を考えてはどうかと思います。
●29年より登記事項証明書の添付省略
平成29年4月1日より国税庁に提出する届出書について二つの見直しが行われています。一つは、法人設立届出書等に登記事項証明書等の添付が不要となったことです。
これは、平成25年に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」に基づいて、行政組織の壁を越えたデータ活用により、公共サービス向上を図ろうとする「登記・法人設立等関係手続の簡素化・迅速化に向けたアクションプラン」という横断的な取り組みの一つです(法人番号導入もその一環)。
法務省では、他の行政機関とオンラインで情報連携ができるような新しい登記情報システムの運用を平成32年度中に開始する予定です。国税庁はオンラインで提供される登記情報の活用を図るため、関係省庁と議論を進め、平成29年税制改正で次の対象届出書等への登記事項証明書の添付が不要となりました。
1.法人の設立・解散・廃止等の届出書
「法人設立届出書」、「外国普通法人になった旨の届出書」、「収益事業開始届出書」等
2.税務署の求めに応じ添付していたもの
「営業等開始・休止・廃止申告書」(たばこ税法、揮発油税法、印紙税法等)等
●届出書の提出先のワンストップ化
また、改正前は異動前と異動後の双方の所轄税務署に提出が必要とされていた異動届出書等については、平成29年4月1日以後の納税地の異動等により、以下の対象届出書等を提出する場合、異動後の所轄税務署への提出が不要となりました。
1.所得税
「納税地の変更に関する届出書」、「納税地の異動に関する届出書」、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」、「個人事業の開業・廃業等届出書」
2.法人税
「異動届出書」
3.消費税
「消費税異動届出書」、「納税地の変更に関する届出書」、「納税地の異動に関する届出書」
●地方税は従前通りの取扱いのため要注意!
これらの取扱いは現行では国税のみで、地方税の届出書については登記事項証明書の添付や提出先は従前どおりですので、ご注意ください。
●軌道に乗ったら一度は考える法人成り
個人事業者が法人を設立することを「法人成り」と呼びますが、個人事業が軌道に乗ってくれば、一度は考えるのではないかと思います。なぜ、考えるのかというと、法人成りにはメリットもデメリットもあるからです。
●一般的なメリット
1.給与所得控除が使える:法人成りをして会社から給与を受け取るようにすれば、経営者自身の所得税で給与所得控除が使え、節税になります。
2.消費税が最大2年間免除される:資本金が1,000万円未満の法人は、2期にわたって消費税が免税となります(但し特定期間の課税売上や、特定新設法人の規定により免除にならない場合がありますので留意してください)。
3.決算期が自由に設定できる:個人事業者の場合は12月決算の3月15日申告と時期が固定されていますが、法人は決算期が自由に設定できます。
4.繰越欠損金の繰越控除の年数が増える:個人は3年ですが、法人の場合は10年(平成30年4月1日以後に開始する事業年度の場合)になります。
●一般的なデメリット
1.法人設立の手間と費用:定款を定めて、登記をしなければならず、定款認証手数料や登録免許税が必要となります。
2.社会保険の加入:個人事業では4人までの雇用であれば社会保険の加入義務はありませんが、法人成りすると1人でも社会保険への加入が義務付けられます。
3.赤字でも7万円の法人住民税がかかる:均等割と呼ばれる部分で、赤字だったとしても税金が取られます。
●あまり数字には出てこない「対外的な信用」
対外的な信用はどうしても個人事業よりも法人の方があるものです。融資や取引で見劣りしないように法人成りをする、というのも立派な理由です。
色々な視点から法人成りをするかしないかを判断した方が良いでしょう。
各種相続手続きに利用することができる「法定相続情報証明制度」が、全国の登記所(法務局)において、2017年5月29日より運用開始されております。
これまで、相続人は、遺産(不動産や預貯金等)に係る相続手続きに際し、被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍関係の書類等一式をすべて揃えたうえで、管轄の異なる登記所や各金融機関など、相続手続きを取り扱う各種窓口ごとに、同じ書類を何度も提出する必要がありました。
法定相続情報証明制度では、登記所(法務局)に戸籍関係の書類等一式を提出し、あわせて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すれば、登記官がその一覧図に認証文を付した写しが無料で交付されます。
そして、その後の相続手続きは、法定相続情報一覧図の写しを利用することで、戸籍関係の書類等一式を何度も提出する必要がなくなります。不動産の登記名義人(所有者)が死亡した場合には、所有権の移転の登記(相続登記)が必要となります。
しかし最近では、相続登記が未了のまま放置される不動産が増加しており、これが所有者不明土地問題や空き家問題など様々な社会問題の要因となっているとの指摘がありました。そこで、相続手続きに係る相続人等の負担軽減や、相続登記を促進するために、法定相続情報証明制度が新設されたとみられております。
同制度においてはまず、相続人又はその代理人が、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍関係の書類等を集め、その記載に基づく被相続人の氏名、最後の住所、生年月日及び死亡年月日並びに相続人の氏名、住所、生年月日及び続柄の情報などを記載した法定相続情報一覧図を作成します。これらの書類を添付した申出を受けた登記官は、内容を確認し、法定相続情報一覧図を保管し、認証文付きの法定相続情報一覧図の写しを交付します。
その後、法定相続情報一覧図の写しは、相続登記の申請手続きをはじめ、被相続人名義の預金の払戻しなど、様々な相続手続きに利用されることで、相続手続きに係る相続人・手続きの担当部署双方の負担の軽減が期待されております。今後の動向に注目です。
2015年1月から相続税が課税強化され、相続税の基礎控除額は「3,000万円(2014年12月31日以前は5,000万円)+600万円(同1,000万円)×法定相続人の数」で算出されます。
養子は、実子がいれば1人、実子がいなければ2人まで、相続人に含められます。
そのため、相続人が多いほど控除額が増えて相続税額が減少するため、富裕層を中心に節税目的で養子縁組をするケースがみられます。
そうしたなか、相続税の節税を目的とした養子縁組が有効かどうか争われた訴訟の上告審で、2017年1月31日に最高裁第三小法廷は、「節税のための養子縁組であっても、直ちに無効とはいえない」との初判断を示しました。
この事案は、2013年に死亡した82歳の男性が、亡くなる前年に長男の息子である孫と養子縁組をしたことが発端となったもので、その結果、長男と娘2人だった男性の法定相続人は、孫との養子縁組が有効であれば4人となります。
男性の死後、娘2人は「養子縁組は無効」として提訴し、一審の東京家裁は有効と認定しましたが、二審の東京高裁が養子縁組を無効と判断したことから、孫側が上告しました。
二審の東京高裁は、長男が自宅に連れてきた税理士から孫を養子にした場合の節税メリットがあることを父親に説明していたことから「相続税対策が中心で、男性に孫との真実の親子関係を創設する意思はなかった」として、養子縁組を無効と判断しました。
この養子縁組は、相続税の節税のためにされたものとしたうえで、民法802条1号の「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとしました。
これに対し、最高裁の第三小法廷は、「相続税の節税の動機と縁組をする意思とは併存し得る」としたうえで、「節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに『当事者間に縁組をする意思がないとき』に当たるとすることはできない」と指摘しました。
本件の養子縁組について、縁組をする意思がないことをうかがわせる事情はなく、「男性に縁組をする意思がないとはいえない」として、孫との養子縁組は有効と判示しました。
今後の動向に注目です。
相続した土地のうち、私道として使われている部分の財産評価をめぐって納税者と自治体が争っていた裁判で、最高裁は自治体側の主張を全面的に認めていた高裁判決を破棄し、さらなる検討を命じる審理差し戻しの判決を下しました。私道と認定されれば税負担は7〜10割減となるため、裁判の結果は不動産相続に大きく影響しそうです。
相続財産の評価方法を規定した財産評価基本通達では、私道として利用されている宅地を「私道供用宅地」として、
@行き止まりの生活道路など、特定の人間が通行するものについては評価を7割減、
A通り抜け道路のように不特定多数の人間が通行するものについては0円――
で評価すると定めています。
原告は相続税の申告に当たって、まずAのゼロ評価私道として申告書を提出しましたが、その後@の7割減私道だと修正して申告をし直しました。しかし税務署は「アパートの敷地の一部であり、そもそも私道ではない『貸家建付地』である」として減額特例の適用を認めず、更正処分を決定。不服とした原告が訴えを起こしたものです。
地裁、高裁の判決ではともに自治体側の訴えが認められ、納税者が敗れました。しかし最高裁では、これらの判断を覆しました。私道に当たるかどうかは「建築基準法などの法令の制約の有無だけではない」として、「宅地の位置関係や形状、道路としての利用状況などを踏まえて、総合的に、ほかの用途に転換することが難しいかを考えるべき」との判断を示しました。
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法人課税における主な改正項目は、次のとおりです。
●試験研究費の税額控除の拡充
改正では、税額控除額は、前年からの試験研究費の増額が大きいほど税額控除率も大きくなっています。中小企業の場合は、税額控除率が費用の12%分とされていましたが、改正では12%〜17%分の控除率となっています。
一方、大企業は、8%〜10%分だった税額控除率が6%〜14%分に改正されています。
また、試験研究費の範囲には、「サービスの開発」も対象になっています。
●所得拡大促進税制の拡充
企業規模にかかわらず、給与支給総額が前年を上回るなどの所定の要件を満たすことで、賃上げ総額の10%分を減税(法人税から控除)してきましたが、より一層の賃上げを促す観点から、改正では、中小企業の場合、前年に比べて2%以上の賃上げを実施した場合には22%分の税額控除、一方、大企業でも、前年対比2%以上の賃上げを実施した場合には10%から12%分と拡充しています。ただ、賃上げが2%に満たない大企業は、現行10%分の税額控除も受けられません。
●組織再編税制の見直し
現行税制では、スピンオフ(特定の事業や子会社を企業グループから切り出して独立した会社とする)に際して、@法人サイドにおいては「譲渡損益(移転資産又は子会社株式)課税」、A個人サイドでは「配当(みなし配当含む)課税」が発生することから、新しい産業への機動的な事業再編ができませんでした。
そこで、今回の改正では、分割、現物分配にあたって、分割法人又は現物分配法人の株主の持株数に応じて、それぞれ、分割承継法人の株式又は子会社株式のみが交付される場合、その他所定の要件を満たせば課税関係が生じないようにしました。
以上の改正は、平成29年4月1日開始事業年度からの適用です。
●中小企業の軽減税率に関して
年800万円以下の所得金額の税率(本則19%、租特15%)は2年間延長です。
なお、中小企業であっても、平均所得金額(3年間)が年15億円を超える事業年度の適用は停止するとしています。
この改正は、平成31年4月1日以後に開始する事業年度からの適用です。
●役員給与等について見直し
(1)利益連動給与について、改正案では現行の利益指標に株価等の指標(業績連動指標)を追加、また、計測期間も単年度指標から複数年度指標に拡大しています。
これを受けて、業績連動指標に基づく一定の株式数の交付を給与に加えています。
(2)退職給与で利益等の指標を基礎として算定されるもののうち一定の要件を満たさないものは、その全額を損金不算入とし、これにあわせて、利益連動給与について、指標の対象が複数年になることを受け、業績目標の達成度合いに応じた新株予約権の一定数の交付を給与に加えています。
なお、損金算入の手続に関しては、一定の時期に確定した金銭又は株式数を交付する給与は、事前確定の届出が必要。一方、複数年の期間に連動した金銭、株式等を交付する給与は、報酬委員会等の決定や有価証券報告書での開示等が必要です。
(3)譲渡制限付株式等について、改正案では、完全子会社以外の子会社役員も付与の対象に加えています。また、非居住者である役員についても損金算入を可としています。
(4)定期同額給与の範囲について、改正案では、税及び社会保険料の源泉徴収等の後の金額を定期同額の範囲に加え、柔軟な対応に改めています。
上記改正の適用は、退職給与、譲渡制限付株式及び新株予約権に係る部分は平成29年10月1日以後、その他の部分は同年4月1日以後に支給又は交付の決議(その決議がない場合、その支給又は交付)をする給与からです。
●中核企業向け投資促進税制の創設
事業主が地域中核事業計画(仮称)を策定(都道府県の認定要)し、高い先進性を有すること(国の認定要)を条件に、機械及び備品等を取得した場合、特別償却40%(税額控除4%)、建物等では20%(税額控除2%)の特例措置が新設されています。
●中小企業投資促進税制上乗せ措置
生産性向上設備等に係る即時償却等については、中小企業経営強化税制と改組し、経営力向上計画の認定を条件に、対象設備を拡充し、一定の器具備品及び建物付属設備が追加されています。
適用期限は、平成29年4月1日から平成31年3月31日までです。
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資産課税の主な改正は、次の通りです。
●財産評価の適正化
1.取引相場のない株式評価の見直し
@類似業種比準方式による株価の算出方法について、
(イ)類似業種の上場会社の株価については、2年間の平均を選択可能に、
(ロ)比準要素である、配当金額、利益金額及び簿価純資産価額に連結決算を反映したものとする、
(ハ)比準要素のウエイトを「1:1:1」(現行1:3:1)に、
(ニ)会社規模の判定基準について、大会社及び中会社の適用範囲を総じて拡大する。
A株式保有特定会社の判定基準に、新株予約権付社債を加える。
2.広大地評価の見直し
面積に応じて比例的に減額する現行の評価方法から、各土地の個性に応じて面積・形状(奥行、不整形)等に基づき評価する方法に見直し、適用要件を明確化する。この改正は、上記1の@は平成29年1月1日以後、1のAと2は、平成30年1月1日以後に相続等により取得した財産の評価からの適用です。
●相続税等(贈与)の納税義務の見直し
相続税等の納税義務の範囲については、相続人等又は被相続人等の住所要件が10年(現行:5年)以内に改正、住所が一時的である外国人同士の相続等については、国外財産を課税対象にしない、日本に住所及び国籍を有しない相続人等が、過去10年以内に日本に住所を有していた被相続人等から相続等により取得した国外財産は課税対象とする(短期滞在の外国人を除く)。この改正は、平成29年4月1日以後の相続等からの適用です。
●医療法人の持分放棄と贈与課税
持分あり医療法人が持分なし医療法人への移行計画の認定を受け、一定の要件を充足した場合、当該医療法人の持分放棄に伴う経済的利益には贈与税を課さない、とする改正がなされています。適用については、所要の措置を講じた後となっています。
●タワマン課税の見直し
居住用超高層建築物(タワマン)に課す固定資産税については、階層別専有床面積補正率(1階を100として階が1つ増すごとに39分の10を加えた数値)を適用した課税に改められます。改正は、平成30年度(平成29年4月1日前に売買契約が締結されたものを除く)から新たに課税されるものに適用されます。
平成28年12月8日、平成29年度税制改正大綱が発表されました。先ず、「個人所得課税」について、主な改正項目につき、内容を概観してみます。
●配偶者控除等の見直し
配偶者控除については、合計所得金額1,000万円を超える居住者については、適用できないこととし、居住者の合計所得金額が900万円を超えると38万円(老人配偶者48万円)の控除額が徐々に縮減し、1,000万円超ではゼロになる、3段階で逓減する仕組みになっています。
また、配偶者特別控除ですが、配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下でも9段階で逓減しながら控除が受けられますが、上記の居住者の合計所得金額に応じて控除額も変わってきます。
例えば、居住者の合計所得金額900万円以下で配偶者の合計所得金額が95万円超100万円以下であれば26万円の控除、となっています。この改正は、平成30年分以後の所得税からの適用となっています。
●積立型の少額投資NISAの創設
制度の内容は、積立投資限度額年間40万円、期間20年、その間の配当、譲渡等は非課税、
但し、譲渡損はないものとする。現行のNISAとは選択適用となっています。
上記改正は、平成31年分以後の所得税からの適用となっています。
●リフォーム減税の拡充
既存住宅(特定の増改築等含む)の耐震改修・省エネ改修に加え、一定の耐久性向上改修工事を実施した場合、ローンの利用による減税額(税額控除)は最大62.5万円、自己の資金による場合は最大50万円となる措置が講じられています。
また、固定資産税(工事翌年度)も3分の2減額になります。一定の耐久性向上改修工事とは、50万円を超える工事で、
@小屋裏、A外壁、B浴室、脱衣室、C土台、軸組等、D床下、E基礎若しくはF地盤に関する劣化対策工事又は給排水管等に関する維持管理・更新を容易にするための工事で、認定を受けた長期優良住宅建築等計画に基づくものであること等、です。
この改正は、増改築等をした居住用家屋を平成29年4月1日から平成33年12月31日までの間に自己の居住用に供した場合に適用となっています。
社員の給料をアップした企業の法人税負担を軽くする「所得拡大促進税制」について、中小企業が2%以上賃上げしたときは最大減税額が22%に拡大されることになりそうです。国は減税幅の拡大で中小企業の賃上げを促す狙いです。
現行制度では、
@給与支給総額が平成24年度から3%増加
A給与支給総額が前年度以上
B従業員1人当たりの平均給与が前年度以上
――の3要件を満たす企業は、賃上げ総額の10%を法人税額から税額控除(中小企業は税額の最大20%、大企業は10%)できます。青色申告をしている個人事業主から大企業まで幅広く利用できる制度です。ここでいう「給与」は、所得税法上「給与所得」として課税される賞与や諸手当も含みます。
これが税制改正により、給料が前年度比2%以上の条件を満たす中小企業を対象に、賃上げ総額の最大22%を法人税額から差し引くことができるようになります。積極的に賃上げに取り組む中小企業の税の軽減効果を大きくすることで、大企業並みの賃上げにつながるようにするとのことです。
<情報提供:エヌピー通信社>
政府は平成29年度税制改正大綱に、高層マンションの上層階の固定資産税額引き上げを盛り込む方針を固めました。固定資産税評価額と実勢価格の開きを利用した「タワマン節税」に、とうとう課税強化の網がかけられることとなります。
マンションの固定資産税には「階層」という概念はなく、1階であろうと50階であろうと、同じ面積には同じ税額がかかっています。検討している新たな計算方法は、高層階ほど重負担に、低層階ほど軽負担にするというもの。おおよそ20階を境界線とし、それより上の階であれば固定資産評価額が現在より高くなるそうです。具体的な算定方法などは今後詰めるため、どの階層からどの程度税負担が増えるのかは未確定。政府は年末までに骨格を固めて税制改正大綱に盛り込み、早ければ再来年から新制度を開始する方針だとしています。
今回の改正の目的は「実売価格と固定資産税評価額のギャップ」の解消です。50階以上あるようなタワーマンションでは、低層階との価格差が1億円以上開くことも珍しくないため、資産価値に差があるのに固定資産税が同一なのは不公平だという声が挙がっているというのが、与党の説明する見直しの理由です。
さらに、近年富裕層の間で行われてきた相続税対策の手法である「タワマン節税」が狙い撃ちされることになります。不動産を相続財産として評価する際には、固定資産税評価額が算定基礎として用いられます。つまり階数やカド部屋といった要素は考慮されません。先述したように、マンションの分譲区画の固定資産税評価額は階数にかかわらず同一。それに対し、実際の取引価格は高層階ほど高くなる傾向があります。タワマン節税はその差を利用して、相続税負担を抑えるスキームです。
<情報提供:エヌピー通信社>
●指摘の多いのが2割加算
相続税の基礎控除引き下げにより、課税対象者が大幅に増加し、国税庁では申告書の内容に誤りがあると疑われる場合に、納税者に文書を送付し申告書の見直しを促していますが、特に指摘の多いのが「相続税額の2割加算」のようです。
●相続税額の2割加算
「相続税額の2割加算」とは、相続又は遺贈により財産を取得した者が、被相続人の一親等の血族及び配偶者、以外の者である場合に、相続税額を2割加算するとするものです。一親等の血族とは父母や子を指します。このため、それ以外の者、すなわち、被相続人の兄弟姉妹が相続等で財産を取得した場合や、血縁関係がない者などに遺贈があった場合等に2割加算があるということになります。
また、孫も2割加算の対象ですが、被相続人の子が相続開始以前に死亡するなどし、代襲相続人となっている場合には2割加算は不要です。
●一親等の法定血族でも孫養子は…
一親等の血族には「養子」も含まれますが、例外があり、被相続人の直系卑属で被相続人の養子になっている者、つまり“孫養子”は2割加算対象外に含まれません(代襲相続人は除く)。「養子」に2割加算はないが、“孫養子”に限っては2割加算があるというこの取扱いのところに間違いが多いようです。
●孫養子類似の一親等の法定血族だが…
国税庁の質疑応答事例に「被相続人の直系卑属でない者が養子となっている場合」の事例があり、ここでは「子の配偶者」が養子となっている場合に2割加算がないことを示しています。すなわち、“孫養子”以外の「養子」は一親等の血族に含まれるため、例えば、「孫の配偶者」や「養子の養子縁組前の子(養子の連れ子)」が養子となっていても2割加算は不要です。
●代襲相続でも2割加算される例
国税庁の質疑応答事例には、代襲相続した孫やひ孫で、遺贈があるので代襲相続人の地位を放棄した場合、この相続放棄者には2割加算除外の適用がない、という珍事例も紹介しています。(代襲相続の規定では放棄をなかったものとするとしていない。)
個人で不動産の賃貸業を営む方(免税事業者)が、たまたま前々年の平成26年(本年、平成28年)、いわゆる基準期間に賃貸用建物を1千万円超(税込)で譲渡していた場合、本年、平成28年は課税事業者になって、仮に、本年中に貸店舗等の賃貸収入などがあれば消費税の納税義務が生じることになります。
●免税事業者にとっては予測し難い
というのも、個人で小規模又は居住用不動産の賃貸業を営んでいる方は、譲渡年(前々年)においても、多くの場合は免税事業者ですから消費税の納税義務は生じません。また、事業者の方自身が課税か免税かを特段意識されていないこともあってか、譲渡をした年の翌々年の状況を気に留めることはまずないように思われます。
このようなケースで、平成28年に再度、別の賃貸用建物を譲渡してしまうこともあります。この状況に至っては、災難ともいえる酷な状況を招来させます。建物の譲渡価額が5千万円であれば、単純に見積もって、消費税額の負担は400万円相当です。消費税負担額の予測可能性を認識するには、少なくとも、前々年の譲渡時に税の専門家の関与が不可欠かと思われます。
●簡易課税の選択と課税期間の短縮
平成27年中に簡易課税選択の届出を失念、そして、本年の売買契約締結後引渡前の段階で、どのような税負担軽減の対策が講じられるかですが、以下が限界のように思われます。もっとも、前々年の課税売上高5,000万円(税込)以下が前提です。
@3か月間の課税期間の短縮と簡易課税選択の届出書の提出、
A3か月間の課税期間の短縮の届出が間に合わなければ、1か月間の課税期間の短縮と
簡易課税選択の届出書の提出です。
もちろん、これら課税期間の短縮と簡易課税を選択するとその適用が2年間継続することになりますが、建物譲渡に伴う課税期間の消費税の負担を軽減できれば、免税事業者にあっては、その後の課税期間は非課税売上が圧倒的に多く、課税売上があっても僅かですので大きな事務負担になることはないように思います。
ちなみに、賃貸用建物の譲渡に伴う簡易課税のみなし仕入れ率は40%ではなく60%です。少なくとも、消費税の負担を相当軽減できます。
●「暦年贈与サポートサービス」の照会事例
国税庁のホームページには、「事前照会に対する文書回答事例」が公表されていますが、平成28年3月に気になる照会事例が掲載されました。ある金融機関が照会した「暦年贈与サポートサービスを利用した場合の相続税法第24条の該当性について」というものです(東京国税局回答)。
この「暦年贈与サポートサービス」とは、その金融機関の預金口座を有する3親等以内の親族関係にある複数の個人を対象として、その個人間の「贈与の意思及び贈与金額の確認」を行い、「双方合意が存する場合」に限り、「贈与契約書の作成」や「預金の振替」等をサポートするサービスなのだそうです。このサービスに基づく贈与は、相続税法の「定期金給付契約に関する権利」に該当するのかというのが照会の内容でした。
●「定期金給付契約に関する権利」とは
「定期金給付契約に関する権利」とは聞き慣れない言葉ですが、いわゆる「年金受給権」を指します。たとえば、AがBに対して5年間現金100万円ずつ贈与する場合、これを「その1年ごとに個別に100万円ずつ贈与する」と見ることができれば、各年で110万円の基礎控除が適用できますので、贈与税は課税されません。ただ、当初より5年間(毎年)現金100万円ずつを贈与するつもりであるならば、これは5年分の「定期金(年金)を受給する権利」を取得したと認定され、一時に贈与税が課税される恐れがあります。この場合に、贈与を受けたものとみなされる金額は、次の@〜Bのいずれか多い金額とされています。
(有期定期金の場合)
@ 解約返戻金の額
A @に代えて一時金を受けることができる場合…一時金
B 1年間で受けるべき金額×残存期間に応じる予定利率の複利年金現価率
●「直ち」には定期金給付契約と認定せず
そのため、現金の「連年贈与」を行う場合と同様に、このサービスが「定期金給付契約に関する権利」に当たる余地があるか心配だ…ということなのです。東京国税局の回答は、このサービスを用いた場合には、贈与の都度の確認があるため、「直ちに」は定期金給付契約とは認定しないとのことのようです(契約の内容や個別の状況などで判断する余地はあるのでしょうかね…)。
●年々増える遺言作成件数
相続・遺言に対する関心は年々高まっており、平成26年1月〜12月に全国の公証役場で作成された遺言(公正証書遺言)は10年前から約4万件も増加し、ついに10万件を超えました。家庭裁判所で扱われた遺産分割事件も同様に増加傾向にあり、こうした背景も影響していることがうかがえます。故人の遺志をできるかぎり尊重したいものですが、遺言を書いたときと相続時では家族の状況が変わってしまうということもあります。では、遺言の内容と異なる遺産の分割をすることは可能なのでしょうか。
●遺言と違う遺産分割は可能?
相続人の間で遺産分割の方法を話し合うことを遺産分割協議と言い、その結果を書面にしたものが遺産分割協議書です。
判例では、
@遺言によって遺産分割協議が禁止されている場合
A遺言執行者が選任されている場合
を除き、遺言と異なる内容の遺産分割協議をすることは事実上認められています。実際、遺言と異なる遺産分割の方法を協議することは珍しくありません。
しかし、だからと言って全て遺産分割協議書が遺言に優先する、という意味ではありません。遺言の内容によっては注意が必要です。
●遺産分割の方法が指定された遺言
過去、最高裁では、特定の財産を特定の相続人に相続させる内容の遺言の場合、遺言者の死亡によって、財産は直ちに確定的に相続人に帰属するとした判決が行われました(平成3年4月19日最高裁判決)。「特定の財産を特定の人に相続させる内容」とは、たとえば「長男○○に埼玉県××の土地を相続させる」というのがこれにあたります。この場合、その後に行った遺産分割は本来の意味での「遺産分割」ではなく、相続人間の取引として財産が移転するものとされています。
その結果、不動産の相続登記を行う際、遺産分割協議の結果をすぐさま登記できず、まずは「遺言に基づく登記」をした後、「相続人間の取引の登記」の二段階で申請しなければならないなど、相続事務に支障をきたすことがあります。こうなると手続き費用も手間も二重にかかってしまいますので、注意が必要です。
2016年度税制改正において、雇用を増やす企業を減税する雇用促進税制は、適用対象となる雇用者をフルタイムの勤務者に限定し、また、対象地域を大幅に縮減した上で適用期限が2年延長されます。
対象地域から、同税制の前提となる雇用促進計画をハローワークが受け付けた件数の上位である東京や神奈川、大阪、愛知などは除外され、28道府県、ハローワークの管轄区域では101地域に縮減されます。
改正により、雇用者の数が増加した場合の特別税額控除制度(雇用促進税制)における地方拠点強化税制以外の措置について、適用の基礎となる増加雇用者数を地域雇用開発促進法の同意雇用開発促進地域内にある事業所における無期雇用かつフルタイムの雇用者の増加数(新規雇用に限るものとし、その事業所の増加雇用者数及び法人全体の増加雇用者数を上限とする)とした上、その適用期限を2年延長します。
対象となる雇用者は、これまで雇用保険の一般被保険者に該当すればパートやアルバイトも対象となりましたが、改正後は無期雇用かつフルタイムの雇用者で新規雇用に限定されます。
この結果、税額控除額の計算は、現行の「増加した雇用保険一般被保険者の数×40万円」から、改正後は「同意雇用開発促進地域内の事業所における新規増加の無期雇用かつフルタイムの一般被保険者の数×40万円」となります。
「同意雇用開発促進地域」とは、最近3年間又は1年間のハローワークにおける求職者に対する求人数の割合(常用有効求人倍率)が全国平均の3分の2以下などの要件に当てはまる地域で、ハローワークの管轄区域で101地域、28道府県が該当します。
雇用促進税制の前提である雇用促進計画の2015年度受付によりますと、2万8,794件のうち、東京都(6,398件)や、大阪府(3,385件)、愛知県(2,815件)などは対象外となります。
なお、この改正に伴い、雇用促進税制の適用の基礎となる「雇用者給与等支給増加額」から「増加雇用者に対する給与等支給額として一定の方法により計算した金額」を控除した上で、所得拡大促進税制と雇用促進税制を重複して適用することができるようになりますので、該当されます方は、ご確認ください。
※注意:上記の記載内容は、平成28年5月9日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
個人課税については、配偶者控除等各種控除の抜本的な改正は見送られました。以下、主な改正項目を概観していきます。
●空き家に係る譲渡所得の特例
昨今、不動産は、負の遺産となることもあり、空き家が社会問題化してきました。その解消策がこの特例の創設です。特例の内容は、次のとおりです。
相続時から3年を経過する日に属する年の12月31日までに、被相続人が住んでいた家屋を相続した相続人が、当該家屋(耐震性を具備したものに限り、その敷地を含む)又は除去後の土地を譲渡した場合には、当該家屋又は除去後の土地の譲渡益から3,000万円を控除することができる、というものです。
但し、幾つかの要件をクリアーしなければなりません。例えば、
@家屋は、昭和56年5月31日以前に建築された家屋(マンションを除く)であって、
相続発生時に、被相続人以外の居住者がいないこと。
A相続時から譲渡時点まで、居住、貸付け、事業の用に供されていないこと。
B譲渡価額が1億円を超えないこと、などです。
適用期間は、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間の譲渡です。
●三世代同居改修工事の特例
三世代同居のために改修工事を行った場合、次の@又はAの特例が適用できる規定で、新たに創設されたものです。
@改修工事の住宅借入金等(償還期間5年以上)の年末残高1,000万円以下の部分に
ついて、一定割合を乗じた金額を5年間の各年において所得税額から控除する。
A改修工事の標準的な費用の額の10%相当額をその年分の所得税額から控除する。
適用対象期間は、平成28年4月1日から平成31年6月30日までの間に居住に供したときです。
改修工事には要件があり、その対象工事は、@キッチン、A浴室、Bトイレ、C玄関で、加えて、@〜Cのいずれかを増設すること、改修後、@〜Cのうち、いずれか2つ以上が複数になること、工事費が50万円超であることなどです。
●その他の改正
@非居住者への相続に係る「国外転出(相続)時課税」に関し遺産分割
協議確定による修正申告や更正の請求を認める。
A市販薬の一定額購入による所得控除の創設(医療費控除との重複適用不可)
B通勤手当の非課税枠15万円までの引上げ等です。
●手取りから逆算して二重課税排除
普通預金の受取利息には利息支払明細書が送られて来ないので、通帳に記載された受取利息の金額から逆算して、源泉徴収された所得税や復興特別税、利子割額を求めます。他の受取利息の分も併せて計算された利子割額は、法人都道府県民税の申告で、税額控除され、控除しきれない額がある場合には還付されます。
これは、法人の受取利息が、法人の課税所得に含まれることから、二重課税を排除するための必要な手続として行われます。
●平成25年税制改正で制度設計の変更
この会計処理と申告手続に変化が起きています。平成28年1月1日以後に法人の受取利息に対する利子割の制度が廃止されたからです。平成25年の地方税法の改正です。
●納税者利便を装う弥縫策
法人都道府県民税の申告書を見ると、「利子割還付額の均等割への充当」という欄があり、納税者が「希望する」「希望しない」を選択して、手続をすることができるようになっています。10年ほど前から設けられているもので、納税者に利便性を提供するためにと解説されています。
本当は、課税当局の事務と金銭負担の回避が本音です。
利子割の課税徴収は、利子の支払金融機関所在都道府県で、当然複数になります。利子割額の控除、還付は、法人の主たる事務所所在都道府県で一括処理するため、都道府県間で精算しなければなりません。
また、7割の法人が赤字申告という状況の中では、利子割還付は普遍的であり、数円程度の還付に数百円の振込料を負担する実態に悲鳴をあげていた、ところです。
●利子割制度創設時の状況とその後
利子割の制度は、昭和62年度税制改正において創設され、昭和63年4月から実施されたものです。当時においては、金融機関が個人と法人の口座を区別することが困難なので、区別なく適用することとされましたが、現在では、ペイオフや本人確認法、犯罪収益移転防止法などの制度に対応してきた結果、利子割制度から法人を全面的に適用除外とすることが可能となっている、と解説されています。
来年の今頃の法人都道府県民税申告書からは、利子割控除と均等割への充当との欄は消えているはずです。
消費税については、平成29年4月1日から軽減税率制度を導入、そして、対象品目及び課税方式についての骨格も決まりました。以下、その内容を概観していきます。
●軽減税率対象品目及び税率
(1)対象品目は、@飲食料品の譲渡(飲食店営業等を営む事業者が、一定の飲食設備のある場所等において行う食事の提供を除く)、A定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞の譲渡、とされています。なお、飲食料品からは、酒類を除くとしています。
(2)税率は、8%(国分:6.24%、地方分:1.76%)です。
●適格請求書等保存方式
(1)課税方式は、適格請求書等保存方式、いわゆる「インボイス制度」を導入することに決定しました。この方式は、登録を受けた課税事業者が交付する適格請求書及び帳簿の保存を仕入税額控除の要件とするもので、具体的には次のようなものです。
適格請求書には、
@発行者の氏名又は名称及び登録番号
A取引年月日
B取引内容(軽減税率対象である旨の記載を含む)
C税率ごとに合計した対価の額及び適用税率
D消費税額等
E交付を受ける事業者の氏名及び名称
が記載されます。
(2)税額計算の方法は、適格請求書の税額の積上げ計算と、取引総額からの割戻し計算の選択となっています。
なお、この適格請求書等保存方式の正式導入は、平成33年4月からとなっています。
●正式導入までの経過措置
平成33年3月までの経過措置の内容は、次のとおりです
(1)現行の請求書等保存方式を維持しつつ、区分経理に対応する措置を講じています。具体的には、請求書に@軽減税率の対象品目である旨と、A税率ごとに合計した対価の額を記載する(区分記載請求書等保存方式)。そして、上記、@・Aについては、区分記載請求書の交付を受けた事業者が、事実に基づき追記することを認める、とするものです。
(2)税額計算の方法は、売上げ又は仕入れを税率ごとに区分することが困難な事業者に対し、売上税額又は仕入税額の計算の特例を設ける、とするものです。
●正式導入後の経過措置
適格請求書等保存方式の導入後6年間、免税事業者からの仕入れについて、一定割合の仕入税額控除を認めています。
平成28年度税制改正における、法人税改革の基本理念は、「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」であり、デフレ脱却、経済再生を最重要課題としています。
以下、国税を中心に主な改正項目を概観していきます。
●法人税の税率引下げ
法人税の税率は、平成28年4月1日以後に開始する事業年度については、23.4%(標準税率ベースでの実効税率29.97%)、平成30年4月1日以後に開始する事業年度については、23.2%(標準税率ベースでの実効税率29.74%)とするものです。
なお、中小法人等の軽減税率15%(所得800万円以下)は、存置されています。
●減価償却制度の見直し
平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備及び構築物の償却方法について、定率法を廃止し、定額法(鉱業用は生産高比例法との選択)に一本化するものです。
●欠損金繰越控除の平準化による見直し
(1)欠損金の控除限度額は、平成28年4月1日以後に開始する事業年度から所得の60%(現行:65%)、平成29年度開始55%(現行:50%)、平成30年度以後開始50%(現行:50%)と一部見直されています。
なお、中小法人等については、従来どおり、控除限度額は所得の100%、そして、欠損金の繰戻還付は存置されています。
(2)平成30年4月1日以後に開始する事業年度から、
@青色欠損金の繰越期間
A青色欠損金の控除制度に係る帳簿保存期間
B欠損金に係る更正の期間制限
C欠損金に係る更正の請求期間を10年(現行9年)に延長する
としています。
●少額減価償却資産の特例について
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、対象となる法人から常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人を除外した上、その適用期限を2年延長しています。
●生産性向上設備投資促進税制の見直し
生産性向上設備投資促進税制(特別償却又は税額控除)については、適用期限をもって廃止する。また、上乗せ措置についても、平成28年3月31日とされている適用期限を延長しない、としています。
●その他の改正
企業の「稼ぐ力」、「攻めの経営」を後押しするため、役員給与における多様な株式報酬等の導入及び組織再編に係る税制の整備といった改正もなされています。